新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』(2021年10月26日、新国立劇場オペラパレス)

振付:マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ/ピーター・ライト
演出:ピーター・ライト
共同演出:ガリーナ・サムソワ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
美術・衣裳:フィリップ・プロウズ
照明:ピーター・タイガン
指揮:ポール・マーフィー
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

オデット/オディール:柴山紗帆
ジークフリード王子:井澤 駿
王妃:本島美和
ロットバルト男爵:中島駿野
ベンノ:木下嘉人
クルティザンヌ(パ・ド・カトル):奥田花純、広瀬 碧
ハンガリー王女:中島春菜
ポーランド王女:根岸祐衣
イタリア王女:赤井綾乃

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地元で期日前投票を済ませてお昼を食べ、新国立劇場に向かいました。初台駅に降り立ってみると、学生さんたちが大勢…どうやら一昨年の『アラジン』以来2回目の団体鑑賞日にぶつかってしまったようです。私は1階席のわりと前方だったので、近くにはいなかったのでまだよかったのですが、開演時の拍手(序曲が始まってもまだやっていた輩が(-_-メ))はどうにかならんものかと、ったく(引率の先生方が事前に強く注意しておくべきと思う)。

少々幸先悪い滑り出しでしたが、内容は上質の芸術作品でした。

美術は重厚でダーク、照明もそれに合わせたのかやや暗めです。ストーリーはどっぷり悲劇(序曲の間に先王の葬列が重々しく登場してくる)ですが、コスチュームなどに違和感がなく、意外に馴染んでいました。ただし、ナポリターナのみ衣装についていた「キラキラ」が文字通りキラキラしすぎでやや落ち着かない印象です。

賓客として招かれた姫=王子の花嫁候補は3か国(ハンガリー、ポーランド、イタリア)のみです。チャルダッシュ、マズルカ、ナポリターナのそれぞれ後に、姫がヴァリアシオンを踊ります。(ヴァリの選曲に多少疑問があったけど、ダンサーさんはよく踊っていました)ハンガリーは「パ・ド・シス」の導入曲(牧だと3幕パ・ド・カトルの導入に使われている曲)、ポーランドは「パ・ド・シス」から躍動的な1曲(ボリショイ当たりではロットバルトのヴァリで使われる曲)、イタリアは「チャイパド」の女性ヴァリの曲でした。(この曲、どうしてもバランシンの名作のイメージが…)ちなみにスペインはロットバルトの手下(多分)として登場し、キレッキレでカッコいい踊りを披露します。

今月初めの「バレエの饗宴」を降板した柴山紗帆さんは無事に全幕を踊りきりました。彼女はおとなしやかな顔立ちなので、淑やかなオデットは十分適役と思いましたが、華やかな舞踊技巧を畳み掛けてくるオディールも魅力的でした。

井澤弟君は今回は若々しさより憂愁を前面に出した役作りで踊りは安定、演技にも悲劇ヴァージョンにふさわしい説得力があります。特に良いと思ったのは2幕の湖畔の場ではロットバルトの瘴気にやられて苦しんでいたのが、最終幕ではそれに負けない強さで悲劇に立ち向かっていくところでした。

侍従にして王子の腹心の友ベンノ役の木下嘉人さんがキレッキレの踊りと的確な演技で存在感十分、彼、良いダンサーです。

もう1つ、今年入団した根岸祐衣さん(ポーランド王女役で脚力と技術が求められる踊りを端正に踊っていた)。コンクール入賞の常連としてお名前だけ知っていました。読売新聞オンラインが彼女の経歴について取り上げていましたので、是非お読みになってください。

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