牧阿佐美バレヱ団「A bientot アビアント」(改訂新制作) 2007年8月26日、新国立劇場オペラ劇場

カナヤ:田中祐子
リヤム :ロバート・テューズリー(ゲスト)
冥界の女王:吉岡まな美
佐藤朱実   坂西麻美  橋本尚美
笠井裕子   青山季可  伊藤友季子
奥田さやか 小橋美矢子  竹下陽子
小嶋直也  森田健太郎  逸見智彦
塚田 渉  保坂アントン慶 京當侑一籠
今 勇也   菊地 研   邵 智羽
中島哲也  清瀧千晴
ほか牧阿佐美バレヱ団

[指 揮]大友直人
[胡 弓]篠崎正嗣
[シンセサイザー]向谷 実(カシオペア)
[演 奏]新日本フィルハーモニー管弦楽団
[原 作]島田雅彦
[作 曲]三枝成彰
[演出・振付]牧阿佐美
[振 付]三谷恭三 ドミニク・ウォルシュ
[美 術]ルイザ・スピナテッリ
[照 明]沢田祐二
[技術監督]加藤三季夫

昨年3月初演の舞台を大幅に改訂しての再演です。
話の筋が刈り込まれ、登場人物を一部整理のうえ、場面の順序を変えるなど、前回の公演を観た多くの人が感じたに違いない「ストーリーのわかりにくさ」を改善しようという配慮が窺えました。

大きな変更点としては、「少年」(リヤムの転生後の姿)は登場せず、前回1幕にあった「森」の場面は2幕1場に縮小して移され(クマやらシカやらサルやらは出てこなくなった)、プロローグとエピローグは「池のほとり」での場面になっていることなどです。
かなりストーリーがすっきりしたので「時空を超えた永遠の愛」という作品のテーマが伝わりやすくなったのではないかと思います。

とはいえ…改善して欲しい点もあります。
リヤムが2度にわたって見るカナヤの幻影の場面に、スクリーンに投射するような実写映像を使ってましたが、わかりやすい反面即物的に過ぎる気も。

できればシルエットで表現するか、紗幕などを使って「白鳥」のオデットの幻影場面や「眠れる森の美女」のオーロラの幻のように見せる手があったのではないかと思います。
あるいはいっそ音楽だけで表現してしまうとか…。

また、「二度と戻れぬ街」でのカナヤとリヤムの再会のシーンは、もう少し踊りで喜びを表現した方がよかったかと。(現にもともとの台本には二人のパ・ド・ドゥがあったし)

音楽は、特に数度にわたって奏でられるカナヤのテーマ?が綺麗なメロディーでよかったです。(金管が「ボレロ」の部分でヘタってたけど)

ダンサーは主役3人はもとより、コールドまでみんな頑張ってました。
「求婚の祭」での逸見さんの「黒い男」と、男性6人のボレロの場面がかっこよかったです。(塚田さん、また身軽にバク宙を披露してくれた)

印象的だったのは、砂漠から生命の木への場面や、ラスト近くの記憶の断片が次々と立ち現れるシーン(「マノン」の沼地の場をちょっと思い出した)など。そして前回いろいろな意味で驚いた「サッカー」の振付が、意外とよくできてると再見して思いました。

照明、衣装、舞台装置は素晴らしく綺麗です。(特に「鏡」を使った異界への扉?が美しかった)

カーテンコールでは、ダンサーたちのあとに島田氏、三枝氏(ちょっと恰幅がよくなった??)、そして大友氏も登場。
島田氏は相変わらず男前です。

追記:2007年のブログからです。やっぱり文句をいろいろと言ってますが、魅力的な失敗作というか未完成であるゆえに惹きつけられるものがあるのか…。以前「このままお蔵入りにした方がいい」とまで言われていたのを読んだ覚えもあります(それは言いすぎな気もしなくはない)。

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