Noism 劇的舞踊vol.3 「ラ・バヤデールー幻の国」

スタッフ
演 出 金森穣
脚 本 平田オリザ
振 付 Noism1
音 楽 L.ミンクス《ラ・バヤデール》、笠松泰洋
空 間 田根剛(DORELL.GHOTMEH.TANE / ARCHITECTS)
衣 裳 宮前義之(ISSEY MIYAKE)
木工美術 近藤正樹
舞踊家 Noism1 & Noism2
俳 優 奥野晃士、貴島豪、たきいみき(SPAC 静岡県舞台芸術センター)

キャスト
カリオン族(踊りを生業とする一族)
ミラン(カリオン族随一の舞姫):井関佐和子
ヨンファ(ミランに次ぐ舞姫):梶田留以
踊り子: 飯田利奈子、西岡ひなの、西澤真耶、鳥羽絢美
メンガイ族(マランシュ帝国の騎兵隊を務める民族)
バートル(騎兵隊長):中川賢
アルダル(騎兵隊士、バートルの幼なじみ):チェン・リンイ
兵士:リン・シーピン
少年:田中須和子
マランシュ族(帝国の支配階級)
フイシェン(帝国皇女):たきいみき(SPAC)
侍女:浅海侑加、深井響子、秋山沙和、牧野彩季
ポーヤン(フイシェンの侍女/実はヤンパオ居留民のスパイ):石原悠子
馬賊(地方の軍閥)
タイラン(馬賊の長・帝国反乱軍の頭目):吉﨑裕哉
シンニー(タイランの妻):池ヶ谷奏
馬賊の男:佐藤琢哉、上田尚弘、髙木眞慈
オロル人(近隣にある帝国)
ガルシン(オロル正教の大僧正、マランシュヘ亡命中の身):奥野晃士(SPAC)
ヤンパオ人(ヤンパオ帝国からの居留民たち)
ムラカミ(ヤンパオ帝国の特務機関員):貴島豪(SPAC)
看護師(ポーヤンの孫娘):石原悠子(2役)

ラ・バヤデール(Wikipediaより)


あらすじ
1人の老人がおぼつかない足取りで現れ、やがて影のように付き添う看護師も登場する。老人は遠い日の記憶をたどりつつ、茫漠とした荒野に存在した帝国「マランシュ」について語り始める。

老人(ムラカミ)は若き日にヤンパオ帝国の特務機関員として、マランシュに駐留していた。荒野に建国されたこの若き帝国に、理想と希望を求めて数多い人々やさまざまな民族が集っていた。皇帝を頂くマランシュ族、帝国の騎兵隊を務めるメンガイ族、踊りを生業とするカリオン族、地方の軍閥でもある馬賊、そしてヤンパオ帝国から来た居留民たち。この5つの民族は、脆いつながりと危うい平衡を保ちつつ、帝国で共存していた。

騎兵隊長バートルと舞姫ミランは、将来を誓い合った仲であった。しかし皇帝プージェは、5つの民族の協和の象徴として皇女フイシェンとバートルを結婚させようと考えていた。

皇帝の考えを知ったバートルは、ミランへの想いと自分の民族への想いとの板挟みになって苦悩する。だがメンガイ族の独立への想いが彼を動かし、ミランを裏切ってフイシェンとの婚約に同意する。

ミランには、隣国オロル帝国から亡命してきた大僧正ガルシンも横恋慕していた。ミランはガルシンの求愛を断固として退ける。その陰にバートルとの恋があることを知ったガルシンは、皇帝プージェに2人の仲を密告する。その密告を知ったムラカミも、ヤンパオ帝国の特務機関員として密かに行動を始める。

さまざまな対立と不和、憎しみを内包しつつ、バートルとフイシェンの婚約式はその日を迎えた…。

***

梅雨明けかと錯覚を覚えそうな暑さの中、横浜まで行ってきました。KAAT神奈川芸術劇場は初めてですが、県民ホールのすぐ近くだったとは。

早めに着いたので、館内を一巡りして公演チラシをゲット。また階下で開場を待ちました。

この作品はクラシックバレエの名作「ラ・バヤデール」をもとに劇作家・演出家として知られる平田オリザ氏が脚本を書きおろし、ダンサーの他に俳優3名が加わって上演されるものです。

金森氏がNoismのために脚本を依頼したところ、平田氏はクラシックバレエ作品の新解釈に興味を示し、そこで金森氏が提示したのが「ラ・バヤデール」。(宗教、カースト制度に代表される格差、民族間問題…金森氏が指摘するとおり、現代に通じる問題が多数内包されています)

客電が落ちる前からすでに物語が始まっています。舞台上には白銀の柱数本が存在し、この柱は自在に移動(時おり出演者自身も動かしていた)して時に慰霊のモニュメントとなり、また宮殿の柱ともなり…舞台の様相がそのたびに一変します。

もともとの「ラ・バヤデール」は想像上の古代インド(言っちゃ悪いが時代考証はデタラメもいいところで、仏教、ヒンドゥー教、ゾロアスター教がごちゃまぜになっている)を舞台にしています。この作品では、1930-1940年代と思しき時代に設定されていて、ラストのカタストロフィは神殿の大崩壊ではなく、隣国からの突然の侵略となっています。

あらすじをお読みになった方はすでにお分かりと思いますが、帝国「マランシュ」は「かの国」のことでしょうね…。舞台上に登場する皇帝プージェは、いかにもハリボテめいた人形の姿で表現されています。(「かの国」の傀儡皇帝=ラストエンペラーをすぐに連想した)

2幕構成のうち、原作の「影の王国」及び「結婚式」にあたる2幕の方が面白かったです。「影の王国」ではダンサーの絶対数が少ない上につづら折りのように下ってくる坂の舞台装置(影の王国で精霊たちが登場するシーンに絶対不可欠)もないのに…、という危惧?を逆手に取り、舞台奥の入り口から1人ずつ登場して列をなし、左右に揺蕩うように移動して、また列の中に戻っていく…。これを繰り返すことによって、幻想的な雰囲気
(後悔にさいなまれたバードルが吸引した阿片がもたらす幻覚)が出ていました。幻覚の最後で、薄れかけたミランの姿を追うバードル。その腕をすり抜けたミランが残したのは、蜉蝣の翅のごとき薄物のみ…(私にはこう見えた)

なお、原作との相違など気が付いたところを少し。「マヌー」(壺の踊り)や「太鼓の踊り」は(振付は全く原型をとどめていないけど)1幕の婚約式のディヴェルテスマン的に出てきました。さすがに『ブロンズアイドルの踊り」は出てきませんでしたが…。

あと、2幕も1幕同様客電が落ちないうちに始まって、白い包帯?にぐるぐる巻きにされた阿片中毒者たちが幽鬼のごとく舞台上を彷徨っているのに、平気でおしゃべりしてる観客が少なからずいたのは…(ちょっとカチンときました)

Noism 劇的舞踊vol.3 「ラ・バヤデールー幻の国」(Noism公式サイト)


関連記事:Noism最新作、『ラ・バヤデール-幻の国』

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック